微生物とともに米に向き合う酒造り。
真摯に、ひたむきに。

十旭日のお酒は、人間がコントロールしきれない自然そのものの力と、
真摯に向き合いそして「楽しんできた」ことでつくられています。
大切にしているのは、微生物や素材の力を「人は手伝っているだけ」という思想。
それは時には、安定的な質や量産といった時代の動向とは反することもあります。
けれど同時に、一度飲んだら忘れられない、唯一無二の酒を生み出す所以でもあります。

酒造りに使用する米は地元出雲の山間部や、奥出雲が主な産地。自家精米で丁寧に磨き、使用しています。近年はご縁で繋がった農家の方の米が増え、情報のやり取りをしながら大切に醸しています。なかでも農薬不使用で栽培された酒米、自然栽培で育った米なども加わっており、これらは生酛造りで単独の商品に仕上げています。なるべく地元の産地の米をとの思いをもっていますが、お酒のご縁から発生する岡山の雄町なども存在します。それぞれの米の持ち味をしっかりと引き出すことを目指しています。

出雲の北部に連なる北山山系の水を汲み上げて仕込みに使用しています。ほどよくミネラルを感じる喉越し。軟水の中でも硬めの水質です。しっかりとした発酵に向く性質を持ち合わせており、+旭日の酒質に大きく関わっていると思います。自然の恵みに感謝しつつ、青く澄んで見えるこの水とお付き合いしています。

仕込蔵

大正15年に建てられた土壁の蔵で仕込みをしています。15センチの壁に守られ、安定した環境で発酵がすすむことの有り難さを感じつつ、呼吸をしているかのような蔵の中で、なるべく自然素材の道具を使用し、いきものでもある麹菌や酵母の手伝いをする気持ちで酒造りに関わることは、今の+旭日のお酒の個性に繋がっているのではと思っています。

造り手

ベテランの出雲杜氏に支えられ、続いてきた旭日酒造。ただ、生活のスタイルが変化していく中で、農業や漁業を生業とし、冬場に酒造りに携わってくださる方々の減少は止まりませんでした。そんな中、蔵元の長女夫婦が酒造りの現場に入り、出雲杜氏の酒造りに触れながら、新たな挑戦も加えつつ現在に至っています。平成22年より、杜氏副杜氏として造りの中心に。ベテランの蔵人や、若く才能溢れる蔵人に支えられ、チームとしての力の向上に努めています。

生もと造り

十旭日の酒の味わいの特徴はどこからやってくるのか?
もちろん麹の造り方、酵母の種類、発酵の違い等、いろいろな要素が影響は大きいものの、そうではないところに思いを馳せていた時がありました。仕込蔵の天井を見上げ、その長く大きな梁を眺めながら、蔵に住み着いているかもしれない酵母の存在を妄想。蔵の長い営みを見守ってきたそのコたちが酒母や醪(もろみ)にイタズラをしにおりてきて、酒の味わいに個性をもたらすのではないかと・・・
いつかそんな酵母での酒造りが叶えば良いなという思いが実現したのが平成20酒造年度の造りの時でした。そこから少しずつ量を増やしたり、種類を増やしたり、米や農家の方と出会い、さらに新たな生酛が生まれたりを重ね現在に至ります。造りの難しさを感じつつも、喜びや学びの多い生酛造りは、これからも続けていきたい大切な造りです。そしてこうやって生まれるお酒の味の幅や奥深さ、美しさをもっと多くの方と共に楽しんでいきたいと思っています。